｢ザ･コンストラクション･オブ・ライト」の
テーマについての考察の経緯。

ザ・コンストラクション・オブ・ライトについてオマケ。私宛に寄せられた”じぇんなあろ”さんのThe construKction of light訳を是非とも紹介したい。ＫＴ訳とはまた違ったというか、かなり解釈態度は違うのだが、ある意味私以上に深い理解に立って、高水準の訳になっているといえる。

　「光の構築」
　苦しみ　一日　空　美しさ　死　黒い　喜び
　愛　からっぽ　一日　人生　死　苦しみ　情熱
　喜び　黒い　一日　憎しみ　美しさ　死　人生
　喜び　痛み　からっぽ　一日　苦しみ　死　愛
　情熱　喜び　黒い　光

　神が死んだというのなら　わたしは何なのか
　ハエの羽についた汚れにすぎず
　天の穴をぬけ　あっという間に
　地上に引き戻されるものにすぎないのか

　ウォホールを天才というのなら、わたしは何なのか
　異星人のペニスについた糸くずにすぎず
　そのままヴィーナスの砂州の下の
　ゼラチン質へと埋めこまれるような存在なのか

　時間　太陽　痛み　信頼　平和　闇の　怒り
　哀しみ　白い　雨　太陽　憤り　痛み　穏やかな
　信頼　夜　怒り　雨　白い　希望　闇の
　神聖な　太陽　時間　信頼　痛み　怒り　憤り
　雨　白い　光

　かつては恐竜であった鳥、その鳥でさえ言葉を話し
　犬でさえも夢を見てかまわないのなら　あり得ないとは言えないはず
　人が思いのままに
　光を構築することさえも
　光を構築することさえも

　苦しみ　一日　空　美しさ　黒い　死　喜び
　愛　からっぽ　時間　太陽　痛み　信頼　平和
　闇の　怒り　哀しみ　白い　雨　憎しみ　憤り
　希望　神聖な　情熱　人生　夜　痛み　穏やかな
　光

　（訳　じぇんなあろ）

ＫＴ訳と比較すると、じぇんなあろさんの訳は実に内省的である。
ＫＴ訳は啖呵を切っているようなもので、例えば、空から地上へ蠅へと、火星からボロへとズームアップしていく威勢のいい言い回しなのに対し、じぇんなあろ訳は、まず小さい自己を汚点として提示し、その後に大きいものと対比する事で自己の小ささを際立たせている。
ＫＴ訳は全体を反語的表現と捉え、「神さん死んだってバカな！なら俺はゴミだってのかよ、否！」って具合に神の死も実は最初から受け入れていない解釈（その方が私には自然に思える）。鳥が話すなんてのも単なる無茶苦茶なものの喩え話と取っている。しかし、じぇんなあろ訳は、反語ではなく肯定ととらえている。鳥や犬やウォーホールも前提に認めて、神の死という極限に一旦身を置いて、考察をしてみる態度。
ＫＴ訳はthe construKction of lightを希望の力と解して、それが人に出来ないわけがないと反語的にとっている。しかし、じぇんなあろ訳は、人が神に代わりうるなんてあってはならない事だと肯定の文脈で一旦とらえ、その上で、極限状態ではそんな奇跡もあっていいのかもと、更に思いを巡らしているかのようだ。
ＫＴ訳は、反語の語感を伝えるべく啖呵をきるように、「思えなくなるじゃないか」というきっぱりした言い方。一方じぇんなあろ訳は、あるかないか奇跡の可能性の度合いにスポットを当てるように、「あり得ないとは言えないはず」、「〜することさえも」と、微妙な言い回しをあえてしている。

じぇんなあろさんの訳詞を読むと、こういう解釈もありかなと思えてくる。（とはいえ、私は私なりの訳もありと思っていて公開中だ）

P.S.　しかし、一方で ライナーノーツの訳は解釈以前のもの、
　字面を逐語訳しただけだってのが、良くわかる。

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